A Way To Now(here)

Aug 1311 min read

人の目を気にしないことは大事だが人からの見られ方を知って学ぶこともある

タイトルのことを最近感じる場面が多かった。ここ半年くらいはコロナの影響でずっと生活圏内を狭くしていることもあって、人の目を気にするも何も全く人に会わない日々が続いていたし、関わる人間も限定的だったから改めて自分が人からどう見られているのかということと、今の自分自身の捉え方に差があることすら考える余地もなかった。

それが最近引っ越しをしたり、旅に出たりと移動が増える中で初見の人と会話することが増えて改めて相手の自分への認識を通じて考えることというのも増えてきた。まず面白いのが、私のことを見てITの仕事をしていると想像する人はかなり少ないらしいということ。この前知り合ったジムインストラクターには「意外です」と言われた。何が意外なのか自分にはさっぱり思いつかなかった。むしろ、私のような人こそITっぽいとさえ思っていたからだ。

私の周りの"IT系"と呼ばれる知り合いは、多かれ少なかれ私みたいな感じの人が多い。ここで言う"IT系"とは、経営者か、経営者寄りのマーケター、エンジニアのどれかを指す。基本よくも悪くも何やってるのかよくわからない人。それはいろんなことをやっているから肩書きを特定するのが難しいという意味で。ただ、初対面で私がITっぽいのか、ぽくないのかを判断する基準は主に「見た目」とか「雰囲気」でしかないから、その点で言うと見た目も自由な人が多い。と、考えると中身も見た目も私みたいな感じこそITっぽいと思われるのだと勘違いしていたが、おそらくこれは自分の狭い世界の中での考え方なのだと気付かされた。事実、IT系の人からは同業者の臭いというか、同じ感じを感じ取ってもらえることが多いけれど、一歩外に出てみれば同業者以外のITというものに対するイメージは全然違うものなんだろう。

とあるヨーロッパの国で去年語学学生をやっていたが、そのクラスはほとんどが働きながら勉強をしている人たちの集まりだったので、生徒一人一人が自分の仕事について自己紹介をする時間があった。先生は一人一人の職業に興味津々で「面白そうだね〜」「すごいね〜」みたいな反応をいちいちしていたのだけれど、私の番が来て「分散型ネットワークの仕事をしています」と言ったら「....それって面白いの?」みたいな反応が返ってきた。

これも若干衝撃だった。私の周りでは「分散型ネットワーク」とはかなりホットトピックであり、これに関わりたいと思っているエンジニアもたくさんいるし、私的にはめちゃめちゃ面白い分野なのだが、これまた一歩IT業界の外に出れば、全く意味不明の話なのだろう。個人的には、こういう経験はとても大切で、IT業界に関わり続ける以上こういう世間とのズレを認識しつつ働いていきたいと思う。最近自分の「能力」をどう最大限使えるのか?と言うことを考えるけれど、私は橋渡しをする人間として常にこういう気持ち悪さを抱え続けていることが必要だと思う。時々(というか結構常に)うざったくなってもう突き抜けてしまいたい気持ちに駆られるけれど、国や人種を超えて間に立つ人間としてのスキルを極めてきたこれまでの経験を活かして仕事するのが合理的ではあるんだろう。そして、それは確かに合理的かもしれないが、そんなものは投げ捨ててしまいたいという気持ちとのこれまた間で自分自身は揺れている。

人生を最適化し続けると、いずれは速度の速いものにたどり着く。

速く走る分、問題は減っていくし障壁も減っていくけれど、世間との距離も広がる。共感できるトピックが減っていく。そして現状テクノロジーを引っ張っている人たちはそういう人たちが多いわけで。

上の年代の方とやりとりするとき、自分はこれでもかと言うほど確認とリマインドを鬼のように入れるようにしている。そして、それは評価されることだ。

しかし同じことを若い人にすると、「さっき通知もらったんで何回も送らないでもらっていいですか?」とキレられる案件となる。こういう感覚の違いがあるのは当然なのだが、特筆すべきは、デジタルデバイドされている側の人間は、そこに大きな溝があると言うことに往々にして気づいているが、デジタルの恩恵を受けて使いこなせている側はそんな溝があるとは往々にして知らない。故に対岸を想像できない。

デジタルのオプションを知見のない人に伝えるとき、それは相手が今生きている次元を越えることと同等だと思う。何かに対して悩んでいるとして、デジタルを使いこなせる人は「このアプリを使えば解決するじゃん、何をそんなことで悩んでいるんだろう?」と思う。その人にとってはそのくらい手軽なことだが、相手にとっては裏にさまざまな事情がある。今デジタルデバイドされている側の人たちは、単に「知らない」のではなく、事情があって「できない」のだ。つまり、その人はその人が生きているリアリティの中で最大限の最適化をした結果、今困っている状況にある、と言うことを提案する側も前提として理解していなければならない。それが「押し付け」を防ぐキーになる。

だから、まず必要なことは相手の話をとにかく聞く。そして、次は一緒に悩むことだ。相手の視点から一緒に悩むことができた時、きっと1番初めに提案したツールではないものを提案しているだろう。それは別のデジタルソリューションかもしれないし、デジタルじゃないかもしれない。でも、相手の目線で悩んだことを解決できるソリューションを提示した時、それがデジタルであろうがなかろうが受け入れてくれることが多い。

「ITっぽくないですね」と言われたことから話がここまで展開してしまったけれど、自分にとって今書いたことを再認識できたのは良かったかも。やっぱり、人を通じて自分を見ることができるね。

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